専門コラム 期待できる若手の育成に会社はどう関わるべきか
「これまでエースとして育ててきた人間が、辞めることになって・・・。
これまで彼には、重要な案件を任せて育ててきたつもりで、これからいよいよこのチームのリーダーとして頑張ってもらいたいと思っていただけに残念です。
理由を聞いてみると、どうも他からオファーがあったらしいのですが、そのポジションは前からやってみたいと熱望していたと聞き、ますます悔しいのです。
給与が理由ではなかったんですよ。
今後は、やりたい仕事のために、会社を変えていくという選択をする若い人材が増えていくのかもしれません。」
そういって、残念そうに語ってくれたのは、50人規模の中小企業の人事責任者。
実は、最近ある企業でも、若手社員は意識が高く、今後の自分のキャリアを見据えて仕事に向き合っているとの話を聞きました。
会社ではなく、仕事に魅力を感じている
「この会社のために働く」のではなく「この仕事が出来るから、この会社にいる」というスタンスだそう。
たとえ大企業で勤めていたとしても、そこでの仕事に魅力がなければ、早いうちに見切りをつけて転職していくというのです。
大企業だから安心だというわけではなく、出来るだけ早いうちに「やりたい仕事を経験して力をつけていきたい」と明言する方もいると聞きます。
次のチャンスを虎視眈々と狙っている様子に、「自分の20-30代とは意識が全く違う」と驚かされていると話してくれました。
会社が期待している人材が辞めないために、どんな関わりをすべきなのでしょうか。
会社の期待が伝わっていない
まず、多くの人事や、直属の上司が思い込んでいることがあります。
それは、会社が期待しているということを、相手はわかっているに違いないという思い込みです。
例えば、ここ2年くらい営業でしっかりと力をつけてもらい、その後はマーケティングのマネージャーとして力を発揮してもらいたい。
スペシャリストとして今の専門性を高めてもらい、自社の技術力向上の底上げを行ってもらいたい。
このような会社の期待をきちんと相手に伝えていますか。伝えるべきことを伝えていないことが多々あるのです。
また、本人の希望をきちんと理解しているつもりになっているというのも思い込みとも言えます。
優秀なエンジニアがスペシャリストとして活躍したいに違いないというのもある意味思い込みです。
若い時はエンジニアとして現場を引っ張っていくことにやりがいを感じているが、将来は経営に携われる人材になりたいと考えているかもしれないのです。
このように、「相手に伝わっていない」「希望を理解できていない」ことが多いのです。
だから、急に退職届を持ってこられて慌てるわけですね。半年後には、管理職に抜擢する予定だったのに、と。
次の就職先がすでに決まっているわけですから、今さら伝えても遅いわけです。
日頃からキャリアプランのすり合わせを
だからこそ、評価面談や、1on1などの面談の時に、相手のキャリアプランをしっかりと
聞きましょう。
ですが、彼らの希望するポジションが用意できない場合もあるはずです。
そのような場合であっても、相手の望みをかなえられるよう関わることは実は可能です。
ポジションを与えられなくても、相手が納得する、満足するオファーをすることも出来るのです。
それは「相手の望み」を細分化していく中で、会社としてオファーできることがあるかもしれないという意味です。
「管理職になりたい」という望みが、報酬なのか、リーダーとして経験を積みたいのか、あるいは他の理由がもとになっているのか。様々な理由があるはずなので、話し合いをしながら丁寧に相手の望みの本質を知ることが出来れば、それに対して、会社が何等かのオファーが出来るかしれないという意味です。
たとえ、すぐには用意することが出来なくとも、会社が自分のキャリアを真剣に考え、丁寧に聞き取りをしてくれるのであれば、すぐにでもこの会社を辞めたいという行動には移らないはずなのです。
人材育成や定着については、以下のコラムもぜひお読みください。
「中小企業に必要な、会社を担う人材育成のあり方・進め方」はこちら
「若手社員の突然退職を防ぐために会社がすべき3つのこと」はこちら
「社員のモチベーション管理で会社が絶対にやるべきこと」はこちら
今日の提言
日頃から「相手の望み」をしっかり把握し、会社の期待を伝えておく