専門コラム 職場での褒める・認める文化が新人育成に欠かせない理由

新卒社員とのコミュニケーションはうまくいっていますか?
入社して約1年が経ち、そろそろ一部の新入社員が不適応を起こしているかもしれません。
先日、ある企業の新入社員向けにメンタルヘルスとキャリア相談を実施しました。彼らは意欲的でしたが、一方で「相談するのは恥ずかしい」「悩みを打ち明けるのは弱みを見せること」と感じている様子もありました。
この背景には、「減点主義」の考え方が根付いていることが影響している可能性があります。新入社員は「同期より劣ってはいけない」「○○ができない自分はダメだ」と、自ら高いハードルを課してしまいがちです。その結果、弱音を吐けない、相談しにくい職場環境になっているのです。
このような環境では、チームの一体感や生産性向上は期待できません。厳しい指導や叱責ばかりが続くと、自己肯定感が下がり、職場不適応やメンタルダウンを引き起こす可能性があります。
だからこそ、「ほめる文化」が必要なのです。
ほめる文化が必要な理由①:社員の自己肯定感を高め、モチベーションを維持するため
「ほめる」という行為は、単に相手を喜ばせるだけではなく、社員の自己肯定感を高める重要な役割を果たします。特に新入社員にとって、上司や先輩から認められることは「自分はこの職場で役に立っている」という実感につながります。
例えば、新入社員が初めて顧客対応をしたとします。その際、「最初にしてはよくできたね」や「しっかりと相手の話を聞いていたね」といった声をかけられるのと、「もっとこうした方がいいよ」とだけ言われるのとでは、受け取る印象が大きく異なります。前者であれば自信につながり、次の仕事にも意欲的に取り組めますが、後者では「まだまだダメなんだ…」と自己評価が下がってしまうかもしれません。
このように、「ほめる文化」がある職場では社員が前向きな気持ちを持ちやすくなり、モチベーションの維持・向上につながります。
また、社員の成長を促すためには、結果だけではなく「努力の過程」や「仕事への向き合い方」も評価することが重要です。たとえば、資料作成を任された新入社員がミスをしてしまった場合、「ここは間違っているけど、細かい部分まで気を配って作業したのが伝わってきたよ。次回はここを意識するともっと良くなるね」と伝えるだけで、成長意欲を高めることができます。
小さな成功体験を積み重ねながら自己肯定感を高めることで、社員は自然と積極的に仕事に取り組めるようになります。
ほめる文化が必要な理由②:心理的安全性を確保し、相談しやすい環境を作るため
新入社員の中には、悩みや不安を抱えていても、それを誰にも打ち明けられずにいる人が少なくありません。
例えば、ある企業の新入社員研修で、こんな声がありました。
「困ったときに『何でも聞いていいよ』と言われるけれど、何を聞けばいいかすら分からないし、質問をすることで『そんなことも分からないの?』と思われるのが怖い」
このように、相談しやすい環境が整っていないと、社員は問題を抱え込んでしまいがちです。そして、抱え込んだまま限界を迎え、最終的に退職してしまうケースも少なくありません。
ここで重要なのが、「ほめる文化」を根付かせることによって、心理的安全性を確保することです。
心理的安全性とは、「この職場では自分の意見や疑問を安心して言える」と感じられる環境のことを指します。上司や先輩が日頃から「ほめる・認める」言葉をかけていると、部下や後輩は「この人は自分のことを見てくれている」「この人になら相談しても大丈夫そうだ」と感じるようになります。
逆に、「できて当たり前」「ミスをすれば叱るだけ」という環境では、社員は「余計なことを言わない方がいい」「できるだけ目立たないようにしよう」と萎縮してしまいます。
心理的安全性が高い職場では、社員同士の信頼関係が築かれ、チームとしての連携も強化されます。その結果、仕事の質が向上し、組織全体の成長にもつながるのです。
ほめる文化を職場に根付かせるための方法
では、実際に「ほめる文化」を職場に取り入れるには、どうすればよいのでしょうか?
①「一日一回、ほめる」習慣をつける
まずは、上司や先輩が意識的に「一日一回、ほめる」ことを実践してみましょう。
例えば、こんな些細なことでも構いません。
「今日の会議での発言、分かりやすかったよ」
「〇〇さんの資料、すごく見やすかったね」
「細かいところまで気を配って仕事しているね」
最初は意識的に行う必要がありますが、続けていくうちに自然と「ほめる文化」が根付き、職場の雰囲気も変わってきます。
②「結果」だけでなく「プロセス」も評価する
成果が出たときだけほめるのではなく、その過程も評価することが大切です。
例えば、営業職の社員が契約を取れなかったとしても、「相手のニーズをしっかり聞いて、良い提案ができていたね」と伝えることで、次につながる自信を持たせることができます。
③「褒め合う仕組み」をつくる
ほめる文化を定着させるためには、社内で「褒め合う仕組み」を取り入れるのも有効です。
例えば、以下のような制度を導入すると、社員同士の承認文化が促進されます。
社内SNSで「ありがとう」を伝える投稿を促す
月に一度、チーム内で「お互いの良いところを発表する時間」を設ける
社内表彰制度を設け、努力や成果を認める機会を作る
こうした取り組みが、「ほめる文化」を根付かせ、より働きやすい職場環境を作り出します。
まとめ
ほめる文化がある職場では、社員の自己肯定感が高まり、モチベーションが維持されるだけでなく、心理的安全性も確保され、相談しやすい環境が生まれます。
まずは、日々のコミュニケーションの中で意識的に「ほめる」ことから始めてみてはいかがでしょうか?
今日の提言
「褒める文化が新人の成長と職場の活気を生む」