専門コラム 優秀な社員が異動で辞める理由。会社や上司が伝えるべき大事なこと
若くて優秀な社員を抜擢したのに本人のやる気が見えないと悩んでいませんか。
先日、30代のビジネスマンの方からご相談を受けました。
長年、現場で技術職としてキャリアを伸ばしてきた優秀な方です。ですが、相談時は全く元気がなく心配になるほどでした。「実は辞めることを考えている」と言うので、まずは話をうかがうことにしました。
優秀な若手社員が辞めたい理由とは
お話をうかがってみると、不本意なプロジェクトを任され、すっかりやる気がなくなってしまったとのこと。出向先から戻り、本社で「頑張ろう」と思っていた矢先の出来事だったのです。
プロジェクトは事務系の仕事だそうで、技術職としてのキャリアが途絶えてしまうことへの不安や怒りでいっぱいでした。
ただ、今回のプロジェクトというのは、本社の将来に関わるもので、まさに「抜擢」されたのですが、本人には全く伝わっていなかったのです。
「なぜ自分がこのプロジェクトに選ばれたのか・・・」
本当は現場に戻り技術職として活躍したい本人は納得がいかず、上司に尋ねたというのです。
ところが上司の回答が、「自分にもよくわからない」、「とにかく頑張って」という、なんともお粗末な回答だったのです。
ますます不安や怒りの感情が収まらくなってしまったようです。
その後、相談の中で本人から話をきいていくと、これまでの実績や頑張りが評価されていることが伝わってきました。
それを言語化して伝えると、しだいに彼の声が明るくなってきました。
「何が得られるのか」を客観的に考える視点
さらに、このプロジェクトで得られることは何だろうかと「キャリア」という視点でディスカッションしていくと、今後、マネジメントをする側になるであろう40代に向けて、まさに今、経験すべき貴重な知識やスキル、そして社内人脈があるということがわかってきました。
先ほどまで、暗い表情だった彼がみるみるうちに明るさを取り戻し、「頑張ってみます」と前向きな回答があり相談は終了となりました。
今回の相談を通じて感じたことは、優秀な社員にこそ、
「あなたは優秀であると評価されている」
「会社から期待されている」
「今後の頑張りを応援している」などの言語化が必要だということです。
ポジティブなフィードバックは、あえて「言わなくてもわかっているだろう」というのは、会社側の怠慢とも言えます。
会社が求めていることを言語化して伝える
「なぜ自分が選ばれたのか」「どうして自分に任せているのか」
優秀な社員にこそ、選ばれた理由、任せている意味をきちんと伝えるべきなのです。
さらに、期待や頑張りの内容(例えばプロジェクトを成功させ○○を完成させるなど)を詳細に伝えられると、本人にはプレッシャーにはなるかもしれませんが、頑張りがいがあるというもの。
また、今回は技術職のキャリアをもつ30代が、この時期に事務系の仕事を任されるというキャリア上の意義を考えてみることも重要です。
本人に考えてもらう機会や上司とディスカッションする時間を取ることが出来れば、なお良いでしょう。
本人も衝動的に「辞めてやる」と自暴自棄にならずに、冷静に将来を見据えて仕事に向き合えるというものです。
<相談に関しては相談者の守秘義務を遵守するため、実際の内容とは多少異なった形で書いております。何卒ご了承ください。>
今日の提言
優秀な若手社員が辞める理由は、会社のコミュニケーション不足という怠慢