専門コラム 社員が辞めない理由を「正しく」知っていますか?
「コロナで業績が悪化してしまい、職場全体の士気が大幅にダウンしているんです。辞める人も続出で、残っている人も仕方なく残っているという感じなんですよね。
責任者も疲弊しており、労務管理については社労士の方に相談しながらやっているんですが、今後、何をどうしていけばよいのかわからなくなってしまって・・」
というのは、個別相談での話です。その方は、現在、経営者の代わりとなり職場の代表者としてお客様と社員との間に入って右往左往されているのです。
ただでさえ、コロナで売り上げが打撃を受けているというのに、さらに職場の士気が全く上がらず、今後、何ができるのかと模索されています。
特に頭を抱えていたのは、社員の「心の扱い方」でした。
頑張ろう・・・
この職場を良くしたい・・・
そんな気持ちが社員から微塵も感じられなかったからです。
その原因がコロナだけではなく、経営者の言動だという理由もわかるので、余計にどうしたものかと悩んでいたのです。
話を伺いながら、ふと疑問に感じたことを口にしてみました。
「残っている人たちが辞めない理由はなんでしょうか。」
すると、
「彼らはどこにも行くあてがないのですよ。辞めたくても辞められない。生活がかかっているからではないでしょうか。」とのことでした。
実際に、本人たちに尋ねてみたのかどうかを聞いてみると、聞かなくても彼らの言動や表情でわかるという答えが返ってきました。
これは責任者の方の憶測にすぎません。思い込みとも言えるでしょう。
このように、社員の士気が上がらない時、その理由を「憶測」だけで決めつけてしまう人が実はとても多いのですね。
そのため、間違った対応をしてしまい、ますます社員の心が離れてしまうということもあるのです。
まず、彼らとじっくり話をしてみることをお勧めしました。
今、どんなことを考えているのか
何が不安なのか、不満は何か
経営者に対する思いは?
これからこの職場をどうしていきたいと思っているのか
これまで吐き出せなかったことを吐き出してもらい、それらを共有するのです。
というのも、この職場は、専門の資格や知識を持った方が働いている職場なので、専門知識を生かした仕事を続けていきたいという「想い」が強くあるに違いないと感じたからです。
例え、業績悪化や経営者の勝手な振る舞いが続いたとしても、まだこの「想い」が残っているのではないかと思ったのです。
それらの「想い」を言語化して、職場の仲間と共有することはとても重要なことなのです。
まさにこのことが、彼らのやる気を引き出す関わりなのです。
なぜなら、「想い」を共有することで、仕事の意義を再確認できるからです。
そもそもどうしてこの仕事に就きたいと思ったのか・・・
この仕事を通じて、何を実現したいのか・・・
これは、キャリアを考える上でも最も大切なことでもある「価値観」なのです。
そして、この仕事をすることに「誇り」を持っているはずです。この「誇り」を失った時、彼らは、絶望して職場を去っていくのです。
もちろん、現状、この職場で働くことはアンラッキーだと感じている方も多いでしょう。
でも、このような時こそ、この「価値観」を共有することで、今後、新しい職場の制度やルール、カルチャーなどを作っていくことも可能になるのです。
社員のやる気を引き出す関わりというのは、何も給与や待遇を良くするだけではありません。ましてや、もっと頑張れ!と叱咤激励するだけでもありません。
まずは、感情、そして価値観を共有することから始めてください。
今日の提言
社員と「想い」と「価値観」の共有をしっかり行う