専門コラム 「やる気がない社員」は会社によって作られている現実
第151話: 「やる気がない社員」は会社によって作られている現実
イキイキ働く社員が育つ人材育成、働きがいのある職場環境や活気ある組織風土づくりを専門に行っている当社には、自ら人材育成や組織風土改革に熱心な企業の社長や経営陣から様々な相談をお受けしております。
社長の中には、自ら「心理学」周辺のことを学んでいらっしゃる方も大勢います。心理学とは言わずとも、メンタルヘルスについては相当詳しく、日々、研鑽されている様子が伝わってきます。発達障害やLGBTの社員の方がいるなど、すでに現場で様々なことが起こる中で、基礎的な知識だけでも学んでおこうという姿勢があるのです。
ですが、結局は「他人事」として捉えているのです。本来、社長に学んで理解してもらいたいのは、いかに自らの言動が自社風土や社員意識に大きな影響力があるのかということです。つまり「自分事」として学び、実践していただきたいのです。
例えば、圧倒的な行動力と発言力をもつ社長が、社内で常に「人の話を聴かない」という行動をとっていたら、どういう影響があるのか。
社員には、「イノベーションが必要」と発破をかけながらも、結局は社員のアイディアや提案を「それは無理だ」「そんなことはおかしい」と否定し続けていたらどうなるのか。
わが身を振り返り、自身の言動が、社員の心理にどのような影響を与えているのかをまずは理解すべきなのです。
学習された無力感
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最近は、ポジティブ心理学の提唱者として知られるマーチン・セリグマン教授ですが、もともとは、彼の有名な説として「学習性無力感」というのがあります。
例えば、長時間、回避できないストレスに晒された人間はじめ動物は、「自分がどのように行動しても状況は変わらない」ということを学習することになります。その結果、その状況下から逃げ出す、変えるなどの行動を一切行わなくなるというものです。自発的、積極的な行動を起こさなくなるというわけです。
ハラスメントによるあからさまな人格否定や暴力、暴言などはなくとも、自らの言動を否定され尊重されない状況が長時間続くと、社員は自らその状況を変えようとする意欲を失います。成功体験を学習することも困難になり、場合によってはうつ状態を引き起こすとも言われています。
奪われた「やる気」
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社長が、「うちの社員はやる気がない」と言っている場合、やる気を奪っている可能性もあるということです。常にダメ出しをして、やる気の芽をつんでいるということです。
無気力に陥った場合、早く疲弊します。そのような社員を叱咤激励して酷使すると、一時的には生産性が向上するかもしれませんが、長続きはしないのです。それどころか、とにかく頑張るようにと酷使続けると、ますます疲弊してしまい、メンタルダウンなど心身の不調を引き起こしてしまいます。
逆に、社員をやる気にすると、「やれば出来る」という自己効力感にあふれ、疲弊しにくくなります。気持ちに余裕もうまれ、社内外問わずまわりとの関係が改善します。互いに協力しあう関係の中で、生産性も上がるための工夫を行い、会社も社員も長期的に繁栄していくのです。
さて、御社の社員は「学習性無力感」状態になっていませんか?
社長が自らやる気の芽を自ら積んでいませんか?
今週の提言
社長が行うべきは、社員が「やる気」を学習できる会社風土をつくること
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