専門コラム ストレスチェックだけでは不足!社員の不調を見逃し陥る経営リスク

メンタルヘルス予防を語る時に必ず知っておくべきなのが「プレゼンティーズム」という言葉です。
これは、社員が職場には来ているものの、心身の不調により100%のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。
このような社員は、表面的には通常通り働いているように見えるため、企業側が気づきにくいものです。
しかし、実際には生産性が低下し、組織全体の業績にも大きな影響を及ぼします。
特に、2025年問題による人材不足が深刻化する中で、一人ひとりのパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を整えることは、企業にとって喫緊の課題です。
さらに、今後50人未満の企業にもストレスチェックの義務化が進む可能性があり、メンタルヘルス対策は企業規模を問わず避けて通れないテーマとなっています。
プレゼンティーズムの隠れたコスト
プレゼンティーズムの問題が見過ごされることで、企業は大きな損失を被ることになると知っていますか。
例えば、
・集中力の低下による業務の非効率化
・残業増加による人件費の負担増
・仕事のクオリティ低下による顧客満足度の低下
社員が100%の力を発揮できないまま働き続ければ、結果的に業務の質も低下し、組織全体の活気も失われます。
それにも関わらず、企業は通常通りの給与を支払わなければならず、コストパフォーマンスが悪化していくのです。
また、高ストレス状態の社員は自覚がないことも多く、周囲からも気づかれにくい傾向があります。
そのため、適切なケアを受けることなく、最終的に長期休職や退職へとつながるケースも少なくありません。
プレゼンティーズムを防ぐために企業ができること
最近では、単なる「メンタル不調者のケア」にとどまらず、社員の健康と幸福に積極的に関わる企業が増えてきています。
プレゼンティーズムの改善を通じて、社員がいきいきと働ける環境を整えることで、企業全体の生産性向上につなげようとしているのです。
そのためには、以下の取り組みが求められます。
1. ストレスマネジメントの意識向上
ストレスは必ずしも悪いものではなく、成長の機会ともなり得ます。しかし、過度なストレスは心身に悪影響を及ぼし、プレゼンティーズムを引き起こします。
社員一人ひとりが適切にストレスに対処できるよう、ストレスマネジメントの知識やスキルを提供することが重要です。
2. ハラスメント防止と職場のコミュニケーション改善
厚生労働省の調査によると、仕事上のストレスの要因は、
1位:仕事の失敗、責任の発生率(39.7%)
2位:仕事の量(39.4%)
3位:対人関係(セクハラ・パワハラを含む)(29.6%)となっています。
対人関係については、職場のコミュニケーションの質を向上させることで、ストレス要因を減らし、社員が安心して働ける環境を作ることができます。
3. 学びと実践の場を提供する
メンタルヘルス研修を実施するだけでなく、学んだことを実践できる仕組みを職場に組み込むことが大切です。例えば、
・定期的なストレスチェックとフィードバック
・1on1ミーティングの導入
・職場内でのメンタルヘルス向上の取り組みを評価・表彰する制度の導入
経営者がリーダーシップを発揮することがカギ
プレゼンティーズムの解消には、企業のトップがリーダーシップを発揮することが不可欠です。
「社員のメンタルヘルスは、企業の成長に直結する」という認識を持ち、組織全体で対策を講じることが求められます。
今こそプレゼンティーズムへの対策をしっかり講じる時なのです。
今日の提言
見えない心の不調が業績を奪う