専門コラム 発達障害の疑いのある部下と信頼関係を築く3つのステップ

「何度伝えてもミスが減らない」
「遅刻が頻繁にある」
「空気を読めないことがあり、まわりのメンバーとの軋轢がある」
こんな部下のことで悩むことはないでしょうか。
先日、ある企業の社員の方から、「上司から何度も叱責される」というメンタル相談がありました。
状況を詳しくうかがっていくと、ほぼ毎日のようにミスについて「何度言ったらわかるんだ」と言われているとのこと。
当初は、パワハラ上司なのかと推測しながら相談を受けておりましたが、実際、仕事がなかなか覚えられずにいることや、ケアレスミスをすることが多いなど、相談者の方にも問題点があることがわかってきました。
結局、相談者の方は、メンタルクリニックを受診し、少しの間、休職することになり、相談は一旦終了しました。
最近、企業におけるカウンセリングでは、ミスが頻発する、コミュニケーションが苦手、優先順位をつけることができないなど、様々な特性をもった本人からは辛いという相談と、その上司の方からは、どう接すれば良いのかという相談が増えていることを感じています。
上司とのコミュニケーションがうまく行かず、メンタル不調になり、クリニックを受診。発達障害と診断された方もいらっしゃいます。
本人はもちろんですが、対応する上司も疲弊しがちで、時には上司がメンタル不調になることもあり、双方にとって辛いことが多いものです。
このような時、上司としてどんな対応をすべきなのかを3つのステップで解説していきます。
ステップ1:現状の整理
まず、上司として客観的にみて、部下の何がうまくいっていないのか、そのことで仕事にどんな支障が出ているか、問題点を書き出してみるということです。
一方で、部下が得意なことがあるのであれば、その点も書き出してみましょう。
例えば
・集中力がりデータ入力が早い
・臨機応変な対応が苦手
・電話対応や顧客対応は難しい
などです。
ここで部下本人の「得意」と「苦手」を整理し、問題点、改善すべきところを理解します。
この最初のステップをきちんとされていない方が多いです。「手のかかる部下」という思い込みだけが先行しているように感じます。
ステップ2:本人と話してみる
次に、部下本人とじっくり話をすることです。この時大切なことは、相手の話をじっくりと傾聴すること。
普段、1on1の際にもいかに「傾聴」が大切かをお伝えしていますが、どんなことに困っているかをじっくり聞き取ることが重要となります。
このステップでは、部下本人が自分の課題をどう認識しているかを知るためであり、同時に、辛い気持ちを吐き出してもらうことで、前向きに取り組む姿勢をもってもらうためでもあります。
対応策を考えていく
最後は、同じことが繰り返さないように、対策を考えるということです。
このステップでは、部下本人と上司の間で、改善すべき点を共有します。
その上で、具体的な対策を考えていきます。
例えば、
・仕事の指示の方法を工夫する。
・あいまいな依頼の仕方はしない。
・マニュアルをつくり、手順に則り業務を遂行してもらう。
・新しい仕事を依頼する場合は、本人の適正を十分に配慮し話し合いをした上で決める
などです。
対策を決めたら、まわりのメンバーと共有することも必要です。
そして、部下が「出来ていること」や、「頑張っていること」を1on1で振り返ることも良いでしょう。
また、上司自身も一人で抱え込む必要はありません。社内の産業医や人事、外部のカウンセラーなどに相談しつつ対応することをお勧めします。
この3つのステップを実施することにより、パワハラ上司と訴えられる、部下がメンタル不調者になるというリスクを回避してください。
人材育成において重要なのは、部下自身をよく理解すること、そして問題点を共有、改善するためにはまず相手を「傾聴する」ことなのです。
今日の提言
現状整理→得意不得意の把握→対話による傾聴