専門コラム ハラスメント予防で「企業が得られるもの」を理解しているか
最近、組織のハラスメント事例がメディアで報道されることが増え、目にする機会が増えてきました。
それだけ世間の関心も高くなっているわけですが、あらためて、組織においてハラスメント対策が上手くいくかどうかは、経営陣、中小企業の場合は社長自身の意識にかかっているという印象を強く持っています。
中小企業にハラスメント防止法が義務化されてからすでに2年になろうとしています。
義務だから「やらなければならない」と考えている社長と、「ハラスメントは会社にとっても、社員にとっても大きな損失である」と理解している社長との間に大きな差が出ています。
社長の意識の違いが生み出す結果
社長が、ハラスメント予防は義務だから「やらなければならない」と考えている場合、その考え方があらゆる場面において社員に伝わってしまいます。
それは、人事などの窓口となる部署や担当者にも伝染します。「やることが増えてしまい困惑している。」などのマイナス部分のみがフォーカスされ、実際のところ組織内のハラスメント予防はなくなるどころか、「なんとなく見過ごされている」という状況になっていくのです。
一方、ハラスメントが起こることで、組織の生産性が落ちることや、社員の離職にも影響があることをしっかりと理解し、社長自ら「ハラスメントを根絶する」という強い意識を持っている場合、ハラスメント予防をすることで「組織が何を得るか」というプラス部分に意識が向いています。
個人だけではなく組織全体への影響が大
ハラスメントはハラスメントを受けた個人だけではなく、組織全体に大きな影響を及ぼします。
モチベーションが下がったり、メンタル不調になるのは、ハラスメントを受けた当人だけとは限りません。同じ職場で働く他の社員にも少なからず影響があるものです。
優秀な人材を採用する、育成する、そして企業として成長を目指すという経営目標を掲げているのであれば、尚更、ハラスメント予防は必須なのです。
また、ハラスメントが起きてしまった場合であっても、迅速な対応や、個人へのフォローなどがあれば、社員は会社に対して信頼し、安心して業務に邁進することができるというものです。
社員ひとりひとりが安心して、職場においてしっかりと自らの能力を発揮できれば、生産性や業績向上にも大きく影響するのです。
ハラスメント相談後のアドバイスに問題も
実際、ハラスメントを受けたという社員の方々から相談をうけることがあるのですが、相談者のメンタルへの影響だけではなく、「仕事に集中できなくなった」、「自信がなくなった」と語られることがよくあります。
ハラスメント、特にパワーハラスメント言動が、個人のやる気や自信を失う原因となり、生産性が低下して業務に多大な支障が出ているのです。
特にある特定の人物からのパワーハラスメントは、「個人間の感情のもつれ」と認識されてしまうこともあります。
そのため、「相手とよく話し合えば解決するのではないか」という安易なアドバイスで済まそうとする組織の対応にはあきれるばかりです。
個人間の人間関係の問題ではなく、企業においては組織全体の生産性や業績に関わることなのです。
ハラスメント予防をすることで「自社は何を得られるのか」という視点が必要であり、社長自らが積極的に関与することが重要なのです。
今日の提言
ハラスメント予防の成果は、トップの意識と覚悟によって決まる