専門コラム

2025年、ビジネス環境は急激に変化し続けています。
日本はこれからますます深刻な人材不足に直面していきます。
グローバルな競争の激化もあり、中小企業を取り巻く課題はますます複雑化しています。
こうした変化の中で、会社の成長を支えるのは「組織の力」です。優秀な人材を確保し、持続的に成長していくためには、社員が共通のビジョンを持ち、一体感を持って働ける組織づくりが欠かせません。
しかし、「理念を掲げて組織改革を進めたい」と考えても、社員一人ひとりの価値観や働き方が多様化する今、足並みを揃えるのは容易ではありません。
特に、長年組織を支えてきた優秀な社員ほど、従来のやり方に誇りを持っており、新しい方向性に対して慎重な姿勢を示すことも少なくありません。どうすれば、異なる考えを持つ社員と共に成長できる組織を築くことができるのか?
今日のコラムではそのヒントをお伝えします。
「説得」しようとしない
組織改革を進める際、多くの経営者が陥りがちなのが、「考え方の違う社員を説得しようとする」ことです。
経営者としては、「この改革が組織の成長につながる」「これが最善の方向だ」と確信を持っているため、社員にもその重要性を理解してほしいと考えます。
しかし、強い言葉で説得を試みたり、論理的に説明して納得させようとしたりすると、かえって逆効果になることが多いのです。
なぜなら、人間の心理として「説得される」と感じると、本能的に身構え、防衛的になるからです。これは単なる意見の相違ではなく、「自分の考えや価値観が否定された」と無意識に受け取ってしまうためです。
例えば、以下のような場面を想像してみてください。
経営者:「この改革は組織にとって必要だから、みんな理解してくれ」
社員A:「でも、今のやり方にもメリットがあるし、なぜ変える必要があるのかわかりません」
経営者:「時代が変わっているんだから、古いやり方を続けていてはダメだ。これは会社の成長のためだよ」
社員A:「そう言われても、私たちは現場でうまくやっていますし、急に変えろと言われても納得できません」
このように、経営者側が正論をぶつければぶつけるほど、社員の心の中に「反発心」が生まれます。結果的に、改革への協力を得るどころか、不信感を抱かれる可能性すらあります。
では、どうすればよいのでしょうか?
共通の価値観を見つけ、一緒に考える
大切なのは、「違い」を強調するのではなく、「共通の価値観」を見つけることです。
・組織をより良くしたい(働く環境をよくしたい)
・仕事を通じて成長したい
こうした思いは、経営者も社員も共通して持っているはずです。
つまり、「登る山は同じ」であり、異なるのは「ルート(方法)」だけなのです。まずは、その共通の目標を明確にし、対話を重ねながら歩み寄ることが重要です。
例えば、以下のようなアプローチを取ることで、対話の流れをポジティブに変えることができます。
経営者:「今のうちのやり方にはたくさんの強みがあるよね。でも、これからの時代、もっと成長していくために、どんな方法があると思う?」
社員A:「確かに、今の方法では近い将来、限界がくる部分もあるかもしれません」
経営者:「そうだよね。じゃあ、一緒にどうすればいいのか考えてみよう」
このように、相手の意見を尊重しながら話を進めることで、「自分たちも組織の成長に関わっている」という意識が芽生え、改革への協力を得やすくなります。
さらに、共通の価値観を具体的な形にするために、「理念」を言語化し、明確な指針として掲げることが不可欠です。
経営陣が一方的に「こう変えよう」と掲げるだけでは、組織は動きません。社員が「この改革なら自分たちも関われる」と思える環境を作り、共に成長できる計画を立てることが、成功の鍵となるのです。
御社では組織改革に向けてのコミュニケーションがうまく出来ていますか。
今日の提言
社員と共通の価値観を共有する組織が成長する