専門コラム 第39話:社長が知っておくべき、人が変われば組織が変わる恐ろしさ
アクティブメンタルな組織作りを行うにあたり、社長自身の本気度と根気が必要であることは言うまでもありません。ですが同時に、社員が「やらされ感」を感じず、他人事ではなく自分事として捉えてもらうために、社内プロジェクトとしてチームを作り、そのチームメンバーがリーダーシップをとって進めていく方法をお勧めしています。
大企業であっても、このような組織作りに関するプロジェクトを立ち上げていくという経験はない場合もあり、立ち上げ時のチームメンバーは、結果的にこのようなプロジェクトに理解とやる気があるメンバーが集められることになります。
といっても、イノベーションを生み出すには、年齢や経験、性別や所属など、ダイバーシティなメンバーでなければなりません。今後の会社の幹部候補となる顔ぶれが集まることも多く、一体、何が始まるのだろうという一抹の不安を抱えながらも、それ自体を前向きに捉え、プロジェクトを生み出し、動かしていくことに喜びを感じるようなタイプが多いとも言えます。
さて、プロジェクト遂行にあたっての苦労は並大抵ではありません。が、社長の強いコミットメントという後押しがあり、プロジェクトメンバーへの権限や予算が認められている場合は、少々の荒波、つまり職場の無理解や抵抗にもめげずに、自社ならではの様々な仕組みを作り上げていきます。
立ち上げ時のメンバーは、自社組織が大きく変わりうるための、まさに土台作り、土壌ほぐしをすることになります。これまでの自社が持っている凝り固まった価値観や習慣を見直し、時にはそれを破壊することで新しいカルチャーが根付くための土壌を整備します。
実はこの産みの苦しみを共有していく過程で、すでにプロジェクトメンバー間には大きな信頼と協力関係が生まれ、彼らの行動や関係性が、アクティブメンタルな組織づくりの見本にもなり得るのです。
このように一見、順調にも見えるプロセスですが、社長には、ぜひ肝に銘じておいてもらいたいことがあります。それは人が変われば、組織が変わるということです。
例えば、事業拡大、新規参入に伴い、大幅な増員が必要になることがあります。中途採用などを積極的に行った結果、これまで自社で働いていた社員の雰囲気や価値観と大きく異なる社員が入社してくることがあります。
彼らは自社のミッション・ビジョンを十分に理解しないまま、あるいはさほど自社への思い入れもなく入社してくる場合もあります。このような時、確固とした組織づくりがなされていないと、職場の雰囲気や人間関係が大きく変わる恐れがあります。
新しく入社してきた社員たちは、この会社で成果を出そうと意欲満々ですので、案外、影響を受けるのは以前から働いていた社員であったりします。上司が変わって、同僚が増えて、以前のやり方が通用しなくなった、協力体制が壊れてしまったと感じ、モチベーションの低下やメンタルヘルス不調に陥るなど往々にして起こります。
人が変わることは大きなリスクになるというわけですが、経営の観点からこれらを避けるわけにはいきません。そのためには、そのリスクを十分に理解しつつ、防衛すれば良いのです。
そのため、アクティブメンタルな組織作りには、必ず「日常業務に取り入れる仕組み」というものが欠かせません。人がかわったため出来なくなった、やらなくなったというのではなく、すでに日常の業務の中に組み込んでしまう様々な仕組みを作り上げるのです。
そして、新たに入社してきた社員に対しても、自社の仕組みの一つとして伝え、実践してもらうようにするのです。そうすることにより、人が変わることで生じるリスクを、より多様性のある社員によって実践される仕組みとして進化させていくのです。
御社では、人が変わっても変わらない組織作り、仕組みづくりを行っていますか?
今週の提言
人が変わって組織が崩壊するリスクを「進化」に変える