専門コラム 第28話:社員の心を置き去りにすると失敗する職場改革
ダイバーシティーによる働く仲間の多様化、そしてワーク・ライフバランスによる働くスタイルの多様化など、今後、労働者を取り巻く環境は大きく変化していきます。現在は、メンタル不調者がいないとしても、今後、この激動の時代を上手く乗り切るには、変化というストレスに強い社員、そして逆境にこそ底力を発揮するチームの存在が不可欠なのです。
変化に強い、つまりメンタルが強い人というのは、決して「心が強い人」ではありません。むしろ、「心が強い」、言い換えると「心が頑な人」は実は変化に対して柔軟に対応することができないのです。よく誤解されているのですが、本当にメンタルに強い人は、「しなやかな心」を持っている人のことを言います。
「しなやかな心」を持った人は、ストレスを受けた時、心は凹みますが、凹んだ状態から戻る力を持っています。この力をレジリエンスと言いますが、レジリエンスは鍛えることが出来るのです。
例えば、仕事でミスをしてしまった時、その点についてはしっかりと反省するものの、長く引きずったりしません。これまで「自分が出来ていたこと」に目を向け積極的に気分を変えたり、上手くいっている人のマネをすることで、同じ過ちを繰り返さないよう学ぶなど、失敗を失敗に終わらせず、何かを得ようとします。
また、「しなやかな心」を持った人は、適切に人に助けてもらおうとします。何でも自分で解決しようと抱え込んだりしません。全てを自分ひとりで背負い込んだり、自分を追い込んだりしません。他者からアドバイスをもらうことで、「もうダメだ」という思い込みから、「なんとかなる」という思考に変わり、その結果、行動も劇的に変わるのです。
「しなやかな心」を持ち、適切に助けを求められる社員がいて、助けを求められた時に、相手に手を差し伸べることができる上司や仲間がいる。そのような組織は、変化にも逆境にも強く、臨機応変に対応できる柔軟な組織であると言えます。
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社員の「意識改革」が成功して初めて自社の実績に結び付く
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職場を活性化していくにあたり、上記のような「意識改革」が欠かせません。テレワークの導入など、会社に来ないで働くことが可能になりつつ今、よほど意識して取り掛からないと、社員が問題を一人で抱え込み、孤立し、メンタル不調に追い込まれることに気づくのさえ難しくなります。
この「意識改革」を創り上げることが出来るかどうか。それが、メンタル不調の徹底予防でもあり、社員がイキイキ仕事に熱中する「働きがいのある職場づくり」の成功のキモなのです。
この「意識改革」なくして、働きやすい職場を目指して様々な制度を導入したとしても、その制度が必要な社員のみが、有難く利用するだけで終わってしまうということです。大きく、立派な入れ物は出来たけれども、その中にいる人間関係が全く変わらず、ギスギスして不平や不満が蔓延していては、心が働きやすいと感じる職場にはなり得ないのです。
ですが、全ての社員が意識改革できるとも限りません。「変化」や「改革」を好意的に受け止め、実践できる社員を一人でも増やすことから始めてください。まずは社員間交流の機会を増やすなど、比較的抵抗なく、楽しくできる、意識改革の土台作りから始めてください。
また、このような「意識改革」には時間がかかります。ですが、決して諦めないでください。この改革により、自社で働くことに自尊心と喜びを感じる社員が増え、チームとして成果を発揮する組織に変わります。それは将来、必ずや自社の財産となるからです。
今週の提言
社員の「意識改革」にじっくりと時間と労力をかける