専門コラム 「社員が辞めない会社」の社長が持っている時代に合ったリーダーシップの条件

社員が定着し、イキイキと働き続ける会社には、必ずといっていいほど共通点があります。
それは、トップである社長自身が「自己認知力」を持っているということです。
「自己認知力」とは、自分の考え方や言動、行動が周囲にどう影響しているかを正しく理解する力のこと。
「自分はどんなリーダーなのか?」「自分のやり方は時代に合っているのか?」を客観的に見つめ直す力です。
社長に求められる「自己認知力」
これまで多くの中小企業の経営者と接してきましたが、うまくいっている会社の社長は例外なくこの「自己認知力」を持っています。
逆に、どれだけ戦略や制度を整えていても、社長自身の思い込みが強すぎたり、過去の成功体験にしがみついていたりすると、社員の離職が止まりません。
たとえば、「昔は厳しく育てるのが当たり前だった」「自分も怒られて育ってきたんだから当然だ」といった昭和的な指導法を今も正当化し続ける方がいます。
もちろん、愛情をもって社員に接しているつもりなのでしょう。
しかし、その「つもり」が今の時代では通用しないことを認められない限り、職場の空気は冷え込み、社員の成長も止まってしまいます。
自分の常識を疑うところから始まる
自己認知力がある社長は、「自分が正しいと思っていること」すら疑います。
「本当にこのやり方でいいのか?」
「社員の立場から見たら、どう感じているだろう?」
「この言い方は、相手にとってどう受け取られるだろう?」
こんな問いを自分に投げかける習慣があるのです。
「うちは家族的な職場だ」と思っていても、実際には上司の顔色を伺って萎縮している社員が多いかもしれません。
「熱意を持って叱っている」と感じていても、社員にはパワハラと受け取られているに違いありません。
自己認知力とは、自分の感覚だけに頼らず、他者視点でも自分を見つめ直す力だと言えるでしょう。
自己認知はリーダーの土台
特に中小企業においては、社長の一言ひとつが組織全体の空気を左右します。
その意味で、自己認知力は「リーダーシップの土台」ともいえます。
社員の成長を願いながらも、実は無意識に成長を妨げている…そんなことが起こらないためにも、自分の言動やスタンスを定期的に見直すことが不可欠です。
自己認知力を高めるために、まず社長がひとりでできること
まずは、1日5分、今日の言動をふり返る習慣を持つことから始めてください。
自己認知力を得る第一歩は、自分自身を観察する時間を意識的に持つことです。
具体的には、1日1回、以下の3つの問いを手帳やスマホメモに書き出してみてください。
今日、社員の前でどんな言葉や態度をとったか?
それは相手にどう伝わったと思うか?
本当はどう伝えたかったのか?
この習慣を続けることで、無意識の言動に気づき、少しずつズレを修正できるようになります。
人は無意識にこそ、性格や価値観が表れます。だからこそ、意識してふり返ることでしか、自己認知力は育ちません。
社員の離職や不満の背景には、社長の言動のズレがあることも少なくありません。
まずは自分自身の「鏡」になる時間を、1日5分だけ。それが、信頼されるリーダーへの第一歩です。
社長自身が変われば、会社は自然と変わっていきます。
「人を育てる会社」は、「自分を育てるリーダー」から始まるのです。
今日の提言
リーダーには「自分を知る力」が必要

