専門コラム 第9話: 社員がイキイキ働く職場のコミュニケーションはココが違う
「メンタルヘルス研修は定期的に行っているから、今度はコミュニケーション
研修に力を入れようと思っているんですよ。やはり職場が活性化するには、コ
ミュニケーションが活発であることが大切ですからね。」
人事役員の方が、同意を求めるように話しかけてこられました。確かに、やり
がいがある、働き甲斐がある職場内でのコミュニケーションは活発です。情報
共有が的確になされており、仕事が可視化され、同僚や部下を応援、支援しや
すい環境になっているものです。
ですが、コミュニケーションの量よりもっと大切なものがあります。それはコ
ミュニケーションの質です。
例えば、ある部署で、部長がいつも部下に対して激を飛ばしているとします。
やり手の部長で、自らの実力で部長の地位をつかみ取った自信家です。その部
長は、ことあるごとに部下にむかって叱咤激励、つまり、お小言を連発してい
たのでした。
「もっと粘れ」「頑張ってやり遂げろ」「弱音は吐くな」と本人は愛のムチとば
かりに声をかけています。しまいには、声を荒げて、特定の部下に対して厳し
い指導をすることも・・・ここまでくると、パワハラと捉えられる可能性すら
あります。
さて、この部署はコミュニケーションが活発と言えるのでしょうか。答えはも
ちろんノーですね。特にこのような事例では、コミュニケーションが一方通行
になりがちです。
つまり、誰も部長に対して意見はもちろん、状況説明すら冷静に客観的に出来
なくなってしまうのです。コミュニケーションで大切にされるべきは、まずは
対話が出来ているかということなのです。
双方向の対話です。
「いやいや、そんなことわかっているよ。」という方ももちろんいらっしゃいま
す。「いつでも上司の自分に相談して欲しい。」と一見オープンな態度で接する
方もいるからです。
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相手を承認して長所を伸ばすためのフィードバック
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ですが、ここでありがちなのが、部下が相談に来た時に上司が行うフィードバ
ックに関する間違いです。どういうことかというと、部下から相談があった時
に、常にネガティブなフィードバックをしてしまう方が多いということです。
部下の出来ていないところを指摘する
上手くいかなかったところを注意する
部下の考えを「それは違う」と否定してしまう
これらの否定形のフィードバックは、部下のやる気を奪うだけではなく、いず
れは、「報告するといつも嫌な気分になるから今回は辞めておこう」という結果
をもたらす危険性もあるということです。
良かれと思って指摘している、
期待しているから注意している
未熟で短絡的な考え方だから「違う」と正しているだけ
と、上司の方は気づかないか、気づいていたとしてもそれが正しいと思い込ん
でいることも多く、なかなか厄介でもあります。ですが、このような場合もコ
ミュニケーションが活発で職場環境が良いとは決して言えません。
社員がイキイキ・仕事に熱中し、能力を発揮できる職場でのコミュニケーショ
ンは、その質が良いのです。一方通行ではなく、対話が出来ているのです。そ
してその対話も、まずはポジティブなフィードバックから始まります。
注意や指摘をする時であっても、まずは肯定から入るのです。
「よく頑張ったね。もっと良くなるには・・・」と指導する
「なるほど、そういう考え方もあるね。私の意見はね・・」と続ける
部下に対して勇気づけのフィードバックができる上司のもとで働くことができ
れば、自分に自信が持て、上司への報連相も抵抗なく頻繁に行うことが出来、
結果的に量も質も良くなるのです。
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コミュニケーションは量だけではなく、その質が問われる
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職場環境を良くしたいと考えているのであれば、コミュニケーションを活発に
するという考え方は重要なステップのひとつです。ですが、普段の職場でどの
ようなやりとりが成されているのか、量ではなく質が問われているのです。
あなたの職場では、部下を承認し、その能力を引き出すような対話が出来てい
ますか?
その重要性が職場で理解されていますか?
今週の提言
社員がイキイキ働く職場のコミュニケーションは「質」が高い