専門コラム 第19話:幹部候補育成に欠かせない、社長が自ら行うべきこと
「一人ひとりは、スキルも高い優秀なベテラン社員なのに、新店舗で全く働いてくれずに困っている。」万を期して第2店舗をオープンさせた30代社長のお悩みです。
以前一緒に働いていた仲間が、社長が新店舗をオープンさせるという情報を聞きつけ、「ぜひまた一緒にやりたい、自分を雇ってください。」と集まってきてくれたのだとか。それまでは皆、自分が所属する店舗で個々に力をつけ、お客様に満足してもらえるという自信も持っているメンバーです。
ところが、無事オープンしたものの、社員がみな、当初の熱意、やる気が全く見られず、それどころか、どちらかというとやる気が無さそうに見えてしまう。何が、どこが間違っていたのだろうかと社長はすっかり悩んでいたのです。
集まってくれたメンバーはそれぞれ職人気質で確かに腕は良く、目の前にお客様がいれば最高の仕事をする方々です。ですが、その「目の前にお客様を呼んでくる」ということには、全く興味がないのだということが、彼らと対話を続ける中でわかってきたのです。
社員の方からすれば、「社長、早くお客様を連れて来て下さいよ。そうすれば、必ず満足してもらえる結果を出しますから。」というスタンスだったというわけです。
社長にしてみれば、彼らは今後、店舗拡大の際に店長になってもらいたいほどの逸材なのですが、当の彼らには、それが全く伝わっていなかったのです。これまで所属していた店舗と同じように、最高のパフォーマンスを出すという意気込みはあるものの、2号店に関しては当事者意識が全くなく、彼らは彼らで社長の不甲斐なさに、「こんなはずじゃなかった。」と失望していたというのです。
それを知り焦った社長は、定期的にメンバーとの対話を行うようにしたのです。そこで伝えたのが、社長が彼らに何を求めているのかということ。第2店舗を成功させるために、自ら集客も関心を持ち、自ら考え、行動して欲しいということ。経営という視点を持ちつつ、社長を支える仲間として、第2号店の成功に協力して欲しいと伝え続けたのです。
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幹部候補生に、将来のキャリアゴールが明確に伝わっているか
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次期社長候補、幹部候補生を育成する際に忘れてはならないのは、彼らのキャリアパスを明確にするということです。会社が将来、彼らに何を期待しているのか伝わっていなければなりません。
特に職位が上がり「ステージ」が変わる時には、視点も上げてもらう必要があります。そのような時には、社長自ら経営に関して出来るだけオープンし、共有することが大切です。組織に属しながら「経営者としての視点」を持ってもらうようサポートすべきなのです。
次世代の幹部候補生に、さらに自らの能力を発揮してもらい、イキイキと仕事に熱中して働いてもらうためには、将来、彼らにどんなキャリア、経験や待遇など用意できるのか、会社が何を期待しているのか、それを伝えるのは社長に他なりません。
せっかくここまで育て上げ、今後もっと責任ある仕事を任せようと考えていたのに会社を辞められてしまった。そんなことが続いているのならば、まずは社長自ら彼らとの対話を増やすことから始めてください。
職人としてのキャリアで終わるのか、あるいはより上を目指して経営に参画する意識や姿勢があるのか。もちろん候補生にも様々な意見や考えがあることでしょう。ですが、社長がオープンに経営について話し、共有することが育成には欠かせないのです。次世代の幹部候補生が育つか育たないか、社長の姿勢がカぎを握っているのです。
今週の提言
社長が幹部候補生のキャリアを明確にし、経営についてオープンに語り合う