専門コラム 第33話:社長が心得ておくべき 会社の未来像を自らの言葉で語る意義
セミナーや個別相談で、いかに「働きがいのある職場づくり」が求められているのかという話をさせていただくと、柔軟な思考を持ち、行動力もある社長や幹部の方に限って、「それは自社にも必要。うちでもすぐに取り入れよう。」と話されます。
アクティブメンタル®体制の5大戦略の話をしている最中にも、社長の頭の中では、「そうか、そういう考え方で、自社でもこんなことをしてみよう。」と様々なアイディアが駆け巡っているようなのです。そして、実際に自社に戻り、「○○をやってみることにした」などと決められ、すぐに実践しようとなさるのです。
ところが、社員の方は社長のテンションとは真逆で、相当、負担に感じている様子です。風通しの良い職場をつくり、個々の社員に働きがいを感じてもらうことで、メンタルヘルスも徹底的に予防するという大きな目標があるのですが、社員にはそれらが伝わっていないため、「また社長が何か風変りなことをやろうとしている。」と捉えられてしまっているのです。
どんなに風通しのよい職場づくり、働きがいを感じられ職場づくりの方法として良いことであっても、その目標を社員と共有することも説明することもなく、社長がどんどんアイディアを実行しようとしてしまう。これは社員にとっては、負担でしかありません。負担を超えて、恐怖になることさえあります。
ストレスチェックが良い例です。義務化に伴い、社員の心身の健康づくりに熱心な会社は、新しい制度の導入や実施に積極的です。産業医面談だけではなく、心理士への相談も可能にするなど、より手厚い制度を導入しようとします。
ところが、会社としての考え方が正しく発信されていないと、悲しいかな、社員の方は、「会社がメンタル不調者をあぶり出そうとしている」と誤解し、産業医面談はもちろん、ストレスチェックも受けないという悪循環を生みだしてしまうことさえあるのです。
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思いつきや気まぐれと捉えられてしまうと必ず失敗する
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このようなアイディアマンでもある社長がしなければならないことは、社長としてあるべき、目指すべき会社の方向性を作り提示することです。目まぐるしい環境変化、競争激化の今、会社が生き残り持続的に成長し続けるには、社会や顧客から選ばれなければなりません。そのためには、社会や顧客が求める独自の価値を提供し、高く評価される必要があります。
だからこそ今、社員が心身共に健康でイキイキ働く「働きやすい職場づくり」で業界優位に立つ必要があるわけです。そのような背景、大前提が重要なのです。もっとも大切な「描くべき未来像」をまず初めに社員に共有しなければなりません。
つまり、何をやるかという具体的な対策ばかりがいくつあっても、それらひとうひとつが素晴らしい内容であっても、社員にとっては、「社長の思いつき」「気まぐれ」などと思われているのです。
実際に、「それは何のために実施するのですか」という社員に対して、人事総務など実務を担当する部署では混乱が起きてしまい、「職場環境をより良くするために皆の意見を聞いてみたいと思っている」と伝えるなど、かなりトーンダウンしたり、会社としてチグハグな対応になってしまうこともあります。
このコラムでも何度もお伝えしていますが、「何をやるか」より「何のためにやるのか」が重要なのです。そして、それを決めるのは社長です。それを社長自らの言葉で社員に語らなければなりません。
そして実際に「何をするか」を決める時には、すべてが「何のためにやるのか」というゴール、目標のためであるべきで、一貫していていなければならないのです。
御社では、会社の未来像を社長の言葉で伝えていますか。
社長の「思いつき」ではなく、一貫した施策が実行されていますか。
今週の提言
職場環境改善は、施策に一貫性がなければ、社員から見放され失敗する